天気が良かった

土堂突堤

フェリー乗り場

でかいことはでかい

不思議な
3階建て

猫、いっぱいいるよ

映画”ふたり”
参照

こんな坂どう?

亡者の血管?

尾道城のゾンビ

網膜に焼き付ける

「別れのうた」
でどうぞ

また来るけんのう
   平成17年11月20日    永世まんだら紀行
尾道篇
涙の最終日

朝の尾道

とても静かな朝

おはようございます

これで三杯食べた

ああ去り難し
午前6時、日が昇る前に目が覚めた。という事は!朝日が見れる?かみさんを起さないように、窓に近寄りカーテンを開ける。『...........。』尾道大橋の向こう、東の空がピンクがかり、海の色をうっすら染めている。とってつけたと思えるくらい絶妙な位置に小船が一艘。完璧な構図にしばし見とれる。ここで写真が趣味のかみさんを起さないと、後で何を言われるかわからないという事に気づき、起こす。これも亭主の役割である。
時々、船が横切り波が揺れる。これがまたいい。結局、山の陰に太陽の出る瞬間は隠され、僕らの前に姿を表した太陽はすでに陽の出と呼ぶには光量が勝りすぎていたが、
瀬戸内の静かな朝に体も脳もナチュラルハイと化した一時間だった。

朝食はちょっとしたボリュームの干物がメイン。未だにこれが何の魚かわからないが、
とにかく美味くてご飯3杯食べてしまった。
まあ旅だからねぇと自分とかみさんを納得させる。
出発までの一時を縁側の椅子に座ってすごす。窓を開けると海風が気持ち良い。
ただただボーっとする。少し切なくなってくる。去り難し、ああ去り難し、尾道の宿。

電車と地蔵
御袖天満宮への道
    

ここから落ちたら...

土塀や石垣が沢山

大きさが伝わない

煉瓦屋根っていいね

西國寺

悪い事は出来ません

朱華園前
いい匂いが..

激美味ワッフル
午前10時、荷物を旅館で預かってもらい、僕らは再び尾道散策を始めた。まずは坂の町の東部にある御袖天満宮(みそでてんまんぐう)を目指す。
ここは大林監督の『転校生』で主人公の小林聡美と尾身としのりが石段を転がり落ちて、中身が入れ替わってしまうという、印象的なシーンが撮られた場所だ。この付近は何故か坂道が少ない。町並みは瓦屋根が基調で、古い蔵ポツリポツリと見受けられる。その間に錆びた看板をかかげたままの薬局があったりする。
尾道の良いところは観光地化された気配が無い事だ。帰京してから読んだ大林監督の著作『ぼくの瀬戸内海案内』によれば、以前尾道市から映画関連の観光施設を作りたいというオファーがあったのだが、監督は断固反対。化粧して何処そこの街と同じような顔になった尾道を見せてどうするのだと...。
最初は戸惑っていた市の担当者達も結局理解を示してくれたそうである。僕ら的には監督の映画を見て予習ばっちりなだけに、尾道に着いた当初はちょっと肩透かしを食らったような気分だった。監督の銅像?も無ければ『〜〜でロケに使われた場所』なる看板も無い。監督制作のロケマップなるものは、駅前の観光案内所でもらってきているのだが、これが非常に不親切。見れば、”この地図を見て迷ってくれ”と、地図にあるまじきことが書いてある。しかしこれも次第になるほどと思うようになってくる。ただ地図にピンポイントされた場所を見て回るという事は映画のロケ地だけみて尾道を見ない事になりかねない。道に迷うことで自分の尾道を探して欲しいという、尾道を愛する監督ならではのアイデアだったのだ。
そんな尾道だがこの『転校生』の舞台となった御袖天満宮は例外のようで、神社に向かう細い道に手書きの看板があった。(上の写真参照)写真左下に書かれた男女の画が映画のポスターなどに使われたデザインだ。多分参道に入っていく道が判りにくい為に立てたのだろう。こういう手作りの看板は味があって良い。その看板を頼りに少し歩くと急な階段と山門が見えた。御袖天満宮に到着である。観光客の姿は無く、人影は境内の落ち葉を竹庭箒で掃除している町の方?のみである。ここは菅原道真が祭られた学問の神社ということで、近所に道真が座ったと伝えられる石板もあった。この神社自体に特筆すべきものは無いのだが、石段の上から山門を見下ろすと、気分は尾身としのりである。(かみさんとここから転がり落ちて入れ替わって...はみなかったが。)
尾道は戦災を免れた事もあるようだが、古く由緒ある寺や神社が多いそうだ。その昔尾道のお金持ち達が競って建立したということで、狭い場所にこれでもかというほどあるのだが、どれもなんというかわざとらしいところがない。それもこの地を訪れるリピーターの多い理由の一つだろう。

尾道といえば坂道や路地である。次の目的地西國時へ向かうまでに色々な顔を持った坂道に出会う。レンガを敷き詰めたようなレンガ坂など。この辺りは山手にあたるのだろうか、道幅は比較的広く、家並みも綺麗で空家は見当たらない。
長い石段を登ると安土桃山時代作の仁王門。そこに大わら草鞋がかけれらている。健脚を祈っての事だそうだ。これが西國寺の入り口である。
不可解な天狗など(写真参照)に遭遇し、ざっと一巡りしたところで、坂を降りる。この辺りで、二人とも腹具合が良くない事を主張しだす。方や「腹がもたれる...」方や「腹が重い....」昨日からのグルメ旅のツケが回ってきたようだ。これが、グルメ旅終了の合図となり日曜の閑散とした商店街で薬局を探す。胃薬を飲んだ二人は気分的に少し楽になり、『おのみち映画資料館』を目指す。
ここは大林作品の資料が展示されているのだろうと期待して行ったのだが、見事に裏切られた!理由はわからないが、皆無。敢えて置いていないのだろけれど...。では何が展示されているかと言うと、尾道は大林映画の他にも昔から映画のロケ地となっていて、それらの映画のポスターなどが展示されていた。代表的なものでは小津安二郎の『東京物語』。20代の頃見ているはずだが、尾道の印象は無かった。また見てみよう。腹具合の不調もあったので、ここで暫く休憩。
本来なら次に、待望の尾道ラーメンを食しに有名店『朱華園』に行く予定だったが、さすがに無理。店の前を通るとお昼時という事もあって長い行列が出来ていた。これで尾道に忘れ物一つである。
とりあえず大林映画『転校生』と『ふたり』に出てくる、『こもん』という喫茶店に向かうことにする。千光寺ロープウェイ入り口隣にあるこの喫茶店は内装は白い漆喰壁で、調度品なども落ち着いた色彩で趣味の良さが感じられる。ロケ地に選ばれた事もうなずける。お目当ては前日から寝かせた生地をオーダーが入ってから焼き上げるというワッフルである。腹具合と相談し、二人で一皿注文した。確かマロンクリーム系だった。しばらくするとかなりボリューム感たっぷりのクリームがはさまれたワッフルが出てきた。おそるおそる口にしてみると、これが美味い!我が人生のワッフル経験の中で最高に美味い!腹具合が悪いはずなのにである。これもまたある種の別腹と言えようか。クリームは三種類ほど。特にマロン系のクリームが絶品。ちょっと説明しにくいが甘さも絶妙、紅茶との相性も抜群だった。ということでこれで昼食終了。グルメ旅は終わっていなかったということである。

宿で預かってもらっていた荷物をピックアップ、女将に礼を言い尾道水道沿いを駅方向へ歩き出す。次の目的地は対岸の向島。フェリーに乗り映画『男たちの大和』のセット、実物大の戦艦大和を見に行くのだ。そんなものが一般公開されているとは知らなかったが、前の晩、宿の女将や仲居さん達が口々に勧めるので、かみさんと相談し向島行きを予定に急遽組み込んだ。女将が言うには、その料亭旅館『魚信』に、撮影中の渡哲也や映画会社のえらいさんが訪れ食事をしていったとの事だった。(さては女将、何か吹き込まれたか?)

尾道水道の水面が昨日よりも強い日差しを受けとめて光を解き放っている。少し眩しいが、瀬戸内の船の路地はどこまでも穏やかだ。所々に舫いである小さな船は漁船だろうか?午後という時間のせいか船上に人影は無い。対岸の向島の岸には閉鎖してしまった造船所が幾つも見える。尾道は以前この造船所に働く人達が訪れ大層賑わったそうだ。前日、昔日の面影を残す歓楽街も見つけたが、灯かりの乏しい寂しげな場所だった。
10分ほどのんびり歩いていくと、大林映画『あの、夏の日 とんでろじいちゃん』のロケ地。土堂突堤が見えてきた。ここで、主人公の男の子とおじいちゃんが、「マキマキマキマキ」と呪文を唱える。すると二人は空を越え、時空を越え...。突堤の先端では釣りに興じる地元の人達がいた。

駅前にあるしまなみ交流館という観光案内所のロッカーに荷物を預け、駅前のフェリー乗り場に向かった。宿からここまで来る間にいくつもの、フェリー乗り場があった。それぞれ行く先が違うそうだ。値段は人は60円〜100円!乗船時間は3分ほど。
このフェリーは大林映画の定番であるだけにどこかで乗りたかった。高校生が自転車で乗船してくればほとんど大林映画の世界になるのだが、日曜の昼下がり、そんな人影は無い。肝心の大和だが、尾道岸で既に見えていた。確かに大きい。一つ気になっていたのは遠目に見える動かない行列。少しいやな予感が...。
向島岸でフェリーを降り、閉鎖された造船所の入り口へと向かう。ここからバスが出ていて、造船所内にあるロケ地へと向かうのだが、すでにバスを待つ長蛇の列が出来ていた。待つこと15分、走る事3分。目の前に巨大な戦艦大和のセットが現れた。
艦体はおよそ190m。実物大ということだ。甲板に上りひと通り見て回る。木製の大和は近くで見るとその大きさだけが際立っていた。
以上!ここから帰りのバスを待ったのだがこの列が大変だった。1時間弱待たされたのではないだろうか。時刻は15時。我々に残された滞在時間はあと2時間弱だった。

やっとのことで、尾道に戻る。予定では持光寺という浄土宗のお寺で、陶芸家の住職に教えを請いながら粘土で仏様を作る予定だったのだが、断念。どうしても僕が見たかった三軒家町にある古い三階建ての家を見に行くことにする。大林映画『さびひんぼう』や『ふたり』に出てきた場所だ。歩いて数分でその一角に辿り着いたのだが、ここも空家が多い。お目当ての家も空家だった。(写真参照)とても不思議な作りだ。画像が無かったら説明に一苦労である。家の中はどうなっているのだろうか?興味はあるが、当然中にはは入れない。こういう素敵な建物は市がメインテナンスしながら保管して欲しい...と無邪気な旅行者は思ってしまうがどうだろうか?
まだ少し時間がある。日もだいぶ大分翳ってきた。二人は坂の頂上まで最後の一登りをすることにした。ずっと気になっていた、頂上付近の天守閣を目指して。
途中で偶然映画のロケ地を発見した。なんだか思いもよらない人から誕生プレゼントをもらった気分だ。その他にも”なんだかここ見た事ある気がする”という場所が何箇所も出てくる。それが大林映画なのか、自分が旅した異国の町なのか、幼い頃遊んだ路地の記憶なのかわからないが....。
最後の急な坂を上るとそこに天守閣は聳え立っていた。入り口は錆びた鉄扉で塞がれ、アーチ型の看板に「全国城の博物館 尾道城」と、悲しげに色褪せた文字。門番の顔色は紫色で、まるで亡霊のようである。いったい何からこの城を守ろうというのか?

下界は夕暮れまぢかの尾道水道。しばらくこの景色を見る事もない。しっかりと網膜に焼き付ける。
坂の最後は中学校か小学校の校庭。尾道の旅、最後にふさわしい眺めだ。何故と問われても答えるのは難しい。
尾道が舞台の大林映画を全部見て、ここに一泊でもすれば解ると思う。
この時頭の中で、ショパンの『別れの曲』が流れていた事は言うまでもない。

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